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しんらんのすいみゃく

親鸞の水脈

吉川 英治

「大法輪 十月号 二十五周年記念特別号」1959(昭和34)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,786 字 · 8 页

青空文庫

僕の家は兄弟が大勢でしたが、次の小さい子供が生まれて名前を選ぶというと、父が自分の思う名前を幾つもこよりに書くのです。そうしてかんじこよりにしてお盆にのせて、その朝神棚に上げておく。お供物とか、小さなお燈明と一緒に、母が仏壇を踏み台にのってきれいに掃除して、皆が集まり、父が「今日は赤ちゃんの名前をつける日だが、子供は一番無心だから」といって、仏壇に手が届かないのを父か母かが抱いて差し上げ、そのかんじこよりの一本をとるのです。そうしてそれが決まると、その朝は赤のごはんといっておりましたが、赤飯を炊いて、その食卓でそれを開き、ああ、千代ちゃんとついたとか、加代ちゃんとついたとかいって、つまり神様や仏様から名前を頂戴したのだといって、その朝みんなで興じ合ったものです。それほど宗教が家庭の中に融合して、何か新しい小さな生命の前途を家族が一緒になって喜んだものです。そういうときには神棚とか仏壇というものは決して高いところ、無縁なところにないわけです。家族の一員として神仏が入っている。理念的、観念的に受け取ろうとするのでなく、無碍自在に神仏と人間が生活を営みあっていたかたちです。