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かいせつ しゅみをつうじてのせんせい
解説 趣味を通じての先生
額田 六福
「舞台 岡本綺堂追悼号」1939(昭和14)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,362 字 · 11 页
凡そ嫌なものの随一であったろう。勿論、好きな人間もなかろうが、我々では殆ど感じない様な微震でも、すぐに感じて庭へ駈け出された。その人が、あの大震災のたえ間ない余震の中で、避難の二日目から日記を記し、やがて復興する時のために手にふれる限りの本から叮寧にノートされていた事は、何と云っていいか、頭の下る限りである。
*
地震についでは、風の日がいけなかった様だ。早稲田の遺品展覧会を見た人は、その遺愛品の中に、あまりに沢山の文鎮があったのを妙に思ったであろう。風ぎらいな先生は、あれで、本であれ、原稿であれ、片っぱしから、押えつけて置かれたのだった。一時華やかなりし左翼連中が、しきりに弾圧され出した時、
「君、あれと同じだね。」
と、笑われた。
反対に雨の日は静かでいいと云われた。
今夜も春の細い雨が降っている。噫!
(三月三十一日夜)
(「舞台」一九三九年五月、岡本綺堂追悼号より再録)