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かいせつ しゅみをつうじてのせんせい

解説 趣味を通じての先生

額田 六福

「舞台 岡本綺堂追悼号」1939(昭和14)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,362 字 · 11 页

青空文庫

白魚なぞもよかった。

肉類もすきであった。日露戦争以来と云う事であるが、牛の缶詰もすきだった。それからサンドウィッチも好まれた。病中には殊にそうだった。

それに反して果実類は、そうすきでなかった。ただパインアップル丈けはよく好まれ、病気になられてからは、枇杷だの何だのの缶詰を召上られたが、平生は概して上らなかった。それに反して私は、法外の果物好きなので、宴会なぞで一緒になると、そっと私の方へ廻して下すったり、到来のメロンなぞ殆ど私が代って頂いて仕舞ったと云っていい。

*

煙草は朝日だった。相当に強い量だった。病気になられて、一時、一日十本と云う事になっていたが、とても気の毒なので間もなくその事は止めになった。最後近くには「もううまくなくなった」と云っていられたが、一日の朝、「煙草を」と云われるので差し上げたが、二口ほど吸われた。それが最後だった。勿論、棺にはいくつもの朝日が入れられた。

*

先生の旅ぎらいは有名である。ことに晩年はそうであった様である。半七老人は日光と箱根へ一度ずつ行ったきりと云う事になっている。それも御用と誰かの病気見舞かなにかで、よんどころない事になっている。