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かいせつ しゅみをつうじてのせんせい

解説 趣味を通じての先生

額田 六福

「舞台 岡本綺堂追悼号」1939(昭和14)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,362 字 · 11 页

青空文庫

先生は、記者時代には、相当に旅行されているし、日露戦役には従軍もされ、世界大戦後には欧洲旅行までされて、なかなかどうして旅嫌いどころではなく、普通人の何十倍もの旅をされたわけであり、銚子、磯部、成東、長瀞、国府津、箱根、湯河原、熱海、修善寺、等へ殆ど毎年の様に旅行されていた。ただ、いつの場合も、病後の静養か、仕事のためが多かったから、已むを得ざる旅であったとも云えない事はない。

銚子、磯部なぞの外では、大抵な処にはいつも後から出かけて行って、御馳走になったり一緒に近所を歩いたりするのが、殆ど例になっていた。嫩会全員で押し出した事も再三ならずあった。堂ヶ嶋の宿では、「佐々木高綱」が演ぜられた。

そうした時、先生の宿で、先生の室へ最もよく出入したのは、宿の主人でなく、内儀でなく、客引の番頭や、湯番や、庭掃きの爺さん等であった。かつて長瀞の時には、この爺さんが、畑の唐もろこし等よくもぎって来ていた。先生はそれらの人々と隔意なく、世間話をするのがお好きだった。人間綺堂の面目が躍如としている。こんな時に、前に書いた野良犬なぞが可愛がられた。先生はその犬の事を話すのに「この人が――この人が――」