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なぞのおんな
謎の女
平林 初之輔
「新青年 第一三巻第一号」1932(昭和7)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,077 字 · 18 页
龍之介は相手をはじめから、直覚的に信用はしていた。そのために別に迷惑がかかるようなことはなかろうと信じていた。ただ彼の好奇心が、もう少し相手の素性をさぐってみたくなったのだ。
「そりゃ、僕は貴女を信用してはいます。見ず知らずの僕に、こんなことを頼むということは今の悪い人間にはできないことですからね。それに、貴女はひどく沈んでいらっしゃるけれど、時々、貴女の顔が青空のように澄み渡って明るくなることがありますよ。あれは本心の素直な人にでなければ見られない顔です。それに貴女が僕を信用して下さったんだから、僕だって貴女を信用しないわけにはゆかないじゃありませんか。だが、僕を信用して下さったついでに、もう一歩すすめて、ほんの少しでも事情をお話し下さるわけにはいきませんか?」
女は心の中で何か争闘しているかのように、眼を宙にして、しばらくためらっていた。
「あたし、貴方のお職業を存じていますので、やっぱり申し上げられませんわ」
「ああ、僕が新聞記者だからですか、それで信用できないと仰言るんですか?」
龍之介は速口に言った。彼は相手が自分の職業を知っていたことを少し驚いた。