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とうふかい

豆腐買い

岡本 かの子

「三田文学」1934(昭和9)年6月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,329 字 · 29 页

青空文庫

――でもおばさん。よく思い切ったことしたのね。

――此頃の若いものにはおとなしくしているとつけ上がられると思いましてね。とうとう裁判所へ駆け込みましたよ。もっともそのまえに二三度首を吊ろうとはしてみましたがね。こんなぶきりょうな女の死にざまをあいつらに見せたら、さぞまた悪口の種になるだろうと思いますと死に切れませんでね。そこで死に身になって料簡を逆に取りましてね。

まえから幾らか酒がいけ、飲むと平常と違ってよくしゃべる女ではあったが今日は加奈子に久しぶりで逢った亢奮からまた余計にしゃべり度いらしかった。

――もっとも素直には鬼奴らはあたしを家から出しませんからね。あんかを蹴っくり返しましてね。あいつらが周章てて騒いでるうちに家を飛び出しましたよ。跣足ですよ。そして最初裁判所だと思って飛び込んだのが海軍省でしてね。

――おばさん、此頃毎日お酒なんか飲むの。

お琴は二つ三つわざと舌打ちして見せて、

――ええ、えい、毎日お酒も飲みますしね。亭主も持ちますしね。は は は は は。

「おばさんひらけたのね」

そこへ洋服に鞄を抱えて気が重そうな若い小男が入って来た。