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まずしきひとびとのむれ
貧しき人々の群
宮本 百合子
「中央公論」1916(大正5)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 59,959 字 · 118 页
死のうとする者は救(たす)けるべきだという常套的な感情に支配されて、その者の一生を考えるより先に、自分の心に満足を与えるのじゃあないか?
私はここに思い至ると、今までのすべてがグザグザに壊(くず)れてしまうように思われた。
考えて見れば、私が今日までしていたことの大部分は人を恵むということに餓えている心を満たしていたのじゃあないか? 私は彼等に衣服をやり、金をやり、食物をやり、同情したが、それ等は、彼等の一生に対してどんな意味があるのか?
若し私がほんとうに、大きな愛で彼等をつつみ、深い同情で引きあげようとしたのなら、新さんを死なせずに済んだろう!
善馬鹿を酒のみにしないで済んだのだろうに。――
けれども二人は、私がどうも出来ないうちに死んで埋められようとしている。ほんとうに、私がどうもしないうちに、なるだけのことはちゃんちゃんとなってしまったのである。
新さんが、自分の命の尊さを知るまでに私が力づけることは思いもよらないことであった。
私はどうしても、彼等を真に愛してはいない。また愛せない! どうしたら好いのだろう。
私はとうとう失敗してしまったけれども、彼等に対して何かしてやらなければならないという望みばかりが、どれほど私に情ない思いをさせるだろう!