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まずしきひとびとのむれ

貧しき人々の群

宮本 百合子

「中央公論」1916(大正5)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 59,959 字 · 118 页

青空文庫

私は、もううんざりして、泣き出しそうにしていると、笑いながら馳けつけて来た男が、木の切れを横にして、茶椀の葛湯(くずゆ)をはがすように掻き落してくれた。

「大丈夫でやす、お嬢様。命に関わるこたあありゃせん」

私の周囲には、家の者だのそばの畑にいた小作共まで集って、笑っていたのである。

ちょいちょいした物が収穫時になって来たので、私共は毎日割合に農民的な生活をした。

取れた物を小作に分けてやったり、漬けたり乾したり、俵につめたりにせわしかった。

けれども、それにつれてほんとにいやなことも起って来た。

ちっとも気の付かないうちに、畑泥棒に入られることである。

もちろんこんなことは、毎年のことである。決して珍らしいことではないが、皆の気持を悪くさせた。

盗まれて行く物は少しばかりの物であるけれども、自分等の尽した面倒だの愛情などを、取って行かれるのがよけい腹立たしかったのである。

で、一日掛りで、一番よく無くなる南瓜に一つ一つ、大きな大きな番号をつけた。

ふくれ返った赤ら顔の上一杯に、「八」とか「十一」とか筆太に書かれて、ごろっとしている姿は実に見物だった。