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まずしきひとびとのむれ

貧しき人々の群

宮本 百合子

「中央公論」1916(大正5)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 59,959 字 · 118 页

青空文庫

けれども、皆無駄骨になって、翌朝になれば、中でも大きい方のが無くなっていたりした。

下女等は一番口惜しがって、ちょっとでも畑地の中にウロウロしている者には、誰彼なしに、怒鳴りつけたり、小石をぶつけたりした。

正直な彼女は、坐るときはいつも畑地に向いて張番をしていた。

そんなだったので、私などでさえ夜ちょっと気晴らしに歩いて、うっかり畑に立ちどまっていたりすると大きな声で、

「だんだあ! ぶっぱたくぞーッ」

と叱られたことさえあった。

ところが或る非常に靄の濃い朝であった。

多分四時頃であったろう。私は、例の通り何も知らずに寝込んでいると、低いながら只事でない声で、

「早くお起き。よ! ちょっとお起き!」

と云う祖母の声に呼び醒された。

私はびっくりして飛び起きた。まだよく目が開かないで、よろよろしながら、

「何!? え? どうしたの?」

と云う私を引っぱって祖母は、雨戸に切ってある硝子窓の前に立たせた。

初めの間は何にも見えなかったが、だんだん目が確かになって来ると、露で曇った硝子越しに、一箇(つ)の人影が南瓜畑の中で動いているのが見える。

「オヤ!」

額をピッタリ押しつけて見ていると、どうも盗って行くものを選んでいるらしく、体が延びたり曲ったりしている。