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まずしきひとびとのむれ

貧しき人々の群

宮本 百合子

「中央公論」1916(大正5)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 59,959 字 · 118 页

青空文庫

が、私共はこれから一体どうしようというのだろう?

祖母も私も彼に何か云おうとしていることだけは確かだと思った。

しかも、さも何でも権利を持っているように、またさもそれを振り廻して見たそうにして立っている自分等に気が付いた。

私共はきっと何か云うのだろう。何か悪事だといわれていることをしている者を見つけた者が、誰でもする通りの、妙に慰むようにのろのろと、叱ったり、おどしたりするのだろう。

けれども、彼は私共に見られたくないところを見つけられた。それだけでも十分ではないか? この上何を云うに及ぼう? 千人が千人云い古した言葉を、クドクドと繰返して、荒立った心持になって見たところで互の心には何が遺(のこ)るだろう。やはり持ち古された感じが、さほどの効果もなく喰い入るばかりである。

私のすることはただ一つだ。

何から先に云って好いか分らないようにしている祖母を、わきに引きよせて、私は一生懸命にたのんだ。

「どうぞそのまんまお帰しなさいまし。その方が好い」

「だって……お前!」

「いいえ! それで好いんだから。きっと好いにきまっているんだから早くそうなさいまし。