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まずしきひとびとのむれ

貧しき人々の群

宮本 百合子

「中央公論」1916(大正5)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 59,959 字 · 118 页

青空文庫

よ。早く!」

祖母は不平らしかったけれども私の頼みを聴いてくれた。

「それを持ってお帰り。けれどもこんなことは、もう二度とおしでない」

と云っただけであった。

甚助は、さもこうなることをちゃんと前から知ってでもいるように、何の感情も動かされないらしい顔をして、頭を一つ下げると、自分が買ったもののように、ゆったりとかの南瓜を抱えてまだ人通りのない往還へ出て行ってしまったのである。

私は、悲しいとも腹が立つともいえない心持になっていた。

けれども幾分の安心を持って、

「私にはたった一つの南瓜で、泥棒呼わりをすることは出来ない」

と心に繰返したのである。

十

今まで、私が甚助の家族に対してしていたことは、たかが古着を遣るか僅かばかりの食物や金を遣ったくらいのことである。

ほんとに小さいことであり何でもないことである。

第三者から見れば、総てのことは、皆世間並な、誰でも少しどうかした者の考えること、することでめずらしくも尊いことでもない。

私とてもまた自分の僅かな施しから、大きな報いを得ようとか、感謝を受けようとかは、ちっとも思っていないのである。