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にせもの
贋物
葛西 善蔵
「早稲田文学」1917(大正6)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,476 字 · 43 页
「母さんはいつ来るの?」
「もう少しするとじき。今度はね、たアちゃんも赤んぼも皆な来るの。そして皆なでいっしょにここにいるの。……早く来るといいねえ」
「あア……」
こうした不健康な土地に妻子供を呼び集めねばならぬことかと、多少暗い気持で、倅の耕太郎とこうした会話を交わしていた。
こうした二三日の続いた日の午後、惣治の手紙で心配して、郷里の老父がひょっこり出てきたのだ。
「俺が行って追返してやろう。よし追返されないまでも、惣治の傍に置いてはよくない。ろくなことを仕出来しゃしない。とにかくどんな様子か見てきてやれ」老父はこうした腹で出てきたのだ。
その晩三人の間に酒が始ったが、酒の弱くなっている老人はじきに酔払った。そして声高く耕吉を罵った。しまいに耕吉は泣きだした。
「それは空涙というものではないんか? 真実の涙か? 親子の間柄だって、ずいぶん空涙も流さねばならぬようなこともあればあるものだ。お前はその涙でもって、俺や惣治を動かして、それで半年でも一年でものんべりと遊んでいるつもりではないんだろうな。そんならばまあいい。お前もまさか、お釈迦様が檀特山へはいって修行したというほどの決心で帰ってきたというものを、追返すというわけにも行くまい。