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にせもの
贋物
葛西 善蔵
「早稲田文学」1917(大正6)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,476 字 · 43 页
久助爺はこれでたくさんだと言うつもりであった。
「子供らもいっしょのことだから、そんな病人のはいった家ではいけまい」と老父もそれに同意したが、
「なるほどこれでは少しひどい」と驚いた。
表戸を開けてはいると四坪の土間で、藁がいっぱい積まれてあった。八畳の板の間には大きな焚火の炉が切ってあって、ここが台所と居間を兼ねた室である。その奥に真暗な四畳の寝間があった。その他には半坪の流し場があるきりで、押入も敷物もついてなかった。勾配のひどく急な茅屋根の天井裏には煤埃りが真黒く下って、柱も梁も敷板も、鉄かとも思われるほど煤けている。上塗りのしてない粗壁は割れたり落ちたりして、外の明りが自由に通っている。
「狐か狸でも棲ってそうな家だねえ」耕吉はつくづくそう思って、思わず弱音を吐いた。
「何しろ家賃が一カ月七十銭という家だからな、こんなもんだろう」と老父は言ったが、嫁や孫たちが可哀想だという口吻でもあった。
「古いには古い家でごいす。俺が子供の時分の寺小屋だったでなあ。何度も建てなおされた家で、ここでは次男に鍛冶屋させるつもりで買ってきて建てたんだが、それが北海道へ行ったもんで、ただうっちゃらかしてあるんでごいす。