轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
にせもの
贋物
葛西 善蔵
「早稲田文学」1917(大正6)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,476 字 · 43 页
彼は二間ほどもない梯子を登り降りするのに胸の動悸を感じた。屋根の端の方へは怖くて近寄れもせなかった。その男は汚ない褌など露わして平気でずぶずぶと凹む軒端へつくばっては、新しい茅を差していた。
彼は屋根の棟に腰かけて、ほかほかと暖かい日光を浴びながら、健康に育った子供の時分のことを想いだして、不甲斐なくなった自分の神経をわれと憫笑していた。一度もまだはいって行ってみたことのない村の、黝んだ茅屋根は、若葉の出た果樹や杉の樹間に隠見している。前の杉山では杜鵑や鶯が啼き交わしている。
ふと下の往来を、青い顔して髯や髪の蓬々と延びた、三十前後の乞食のような服装の男が、よさよさと通って行くのが、耕吉に見下された。
「あれは何者だ?」
「あれですかい、あれは関次郎というばかでごいす」
「フーム、……そうか」
彼は何気ない風して言ったが、呼吸も詰るような気がされた。「なるほど俺もああかな、……なるほど俺と似ているわい」
彼はそこそこに屋根に下りて、書斎に引っこんでしまった。
青い顔して、人目を避けて、引っこんでいる耕吉の生活は、村の人たちの眼には不思議なものとして映っていた。