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にせもの

贋物

葛西 善蔵

「早稲田文学」1917(大正6)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,476 字 · 43 页

青空文庫

治の見当には、たいした狂いがなさそうに彼にも考えられた。そしてとにかくにこれだけのものを借りだした惣治の才略に感服した。

「何しろたいしたもんだ。一本五十円ずつと見積ってもたいしたもんじゃないか。五百や六百というこっちゃないぜ。とにかく俺は毎日の朝発つことにしよう。そして手早く極めてきてやる」耕吉は調子づいて言った。

「そうしてもらいましょう。僕も初めは鉱山の役人どもに売りつけるつもりで奔走してみたんだが、いざとなるとなかなか金は出せない。この間も寛畝を好きだという人が印譜から写真にしたものやら持ってきて、較べてみていたが、しまいにこの寛畝の畝の字に疑問な点があるとか言って難癖をつけて、それでおじゃんさ。そんな訳だから、気長に一本一本売るつもりならこの辺でもいいが、纏った金にしようというには、やっぱし東京でないとだめらしい」

その晩は惣治も久しぶりでの元気で、老人の帳場まで仲間にはいって、三人で鶏などつぶして遅くまで酒を飲んだ。すくなくとも千円からの金が、数日中には確実にはいるという話は、忠実に勤めている帳場のしょぼしょぼした眼にも、悦ばしげの光りを注いだ。