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あかひげしんりょうたん

赤ひげ診療譚

山本 周五郎

07 おくめ殺し

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,548 字 · 47 页

青空文庫

「そんなことに感心するやつがあるか、どんな理由にせよ人を殺すなどということはゆるされない、その点では角三は愚か者だ」と去定は怒りの声で云った、「眼先の事ですぐによろこんだり、絶望して身を滅ぼしたりする例は貧しい人間に多い、恒産なければ恒心なしといって、根の浅い生活をしていると、思惑の外れた場合などすぐ極端から極端にはしってしまい、結局、力のある者の腹を肥やすだけだ」

「約束の理由さえわかれば打つ手もあるにちがいない」と去定はまた云った、「坊主どもや強欲な連中に、いかがわしい新地などをつくらせるより、一軒のめし屋を守ってやるほうが本当だろう、だがそのためには、与七がなんのためにあんな約束をしたかという、その理由がわからなくてはだめだ」

暫く歩いてから、去定は空を見あげて、現実でないなにかに問いかけるように、熱のこもった声で呟いた、「いったい与七はなんの代償に、あんな約束をしたのだろう、――」

肝臓の悪い病人を診てそれがわからず、どこが悪いのかと、神仏に助けを求めている医者のようなあんばいですな、と登は心の中でやり返した。

その翌日、去定に命じられて登は角三をみまいにいった。