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あしがるほうこう
足軽奉公
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館、1945(昭和20)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,949 字 · 28 页
「なんと仰せられます」
「とぼけるな、汀のことは昨夜の物語に洩らしていたぞ、右田は高島へ貰う、これほどのもののふを手に入れて、今さら離すばかはおるまい、右田は高島で貰う、そのほうは汀をつれて帰れ、それで藤六にも不足はあるまいが」
「お待ち下さい」
鉄之助がおどろいて、
「……お館さまがそのように仰せられましては」
「なに藤六が自分でそう申したではないか」
と、忠秋は笑った。
「……余が望んだ汀をそのほうがつれてまいる、そのほうの望む藤六を余が貰う、これで五分と五分だ、……帰ったら三春侯に申上げて呉れ、高島藩では天下一の槍術家を足軽に抱えておるとな」
酒が冷えた、代えてまいれという忠秋の声は、しめやかになった御殿の内に、燈の点いたような活気を与えた。外はまだしきりに降る雪である。