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のうそん

農村

宮本 百合子

「多喜二と百合子 七号~十三号」多喜二・百合子研究会、1954(昭和29)年12月~1955(昭和30)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,223 字 · 97 页

青空文庫

いかにも手が鈍い。東京の職人も煙草を吸う時間の永いには驚く様だけれ共、まして此処いらのはひどい。弁当は持って来ない。縁側に腰をかけて出して呉れる膳に向って暖ったかい飯を食べる。何故職人に平常の時膳を出してやるのだと聞くと此処らでは少しゆとりのある家では、皆昼を出すのだと云う事だ。あんまり職人につくして居る様な気がする。

トタン屋も来ない様になり、家の中は一層ひっそり閑として、私が大股に縁側を歩く音が、気の引ける様に、お寺の様に高い天井に響く。持って来た本もよみつくした私は、一日の中、半分私が顔を知らないうちに没した先代が、細筆でこまごまと書き写した、戦記、旅行記、物語りの本に読みふけって居る。若しそうでない時は、炬燵で祖母ととりとめもない世間話しや、祖母の若い時分の話をきくのである。風は日一日とすさんで雪の降りつもった山からは、その白さが下へ下へと流れて来る。

始めての雪の降った前の晩の寒かった事と云ったら、私でさえ、床の中でガタガタするほどだった。

「寒くはないか。

ときく祖母の声さえ震えて居たので私は女中に湯タンポを入れさせた。

「お前が居なければ、私が云うまで気をつけて呉れるものはない。