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うんめいのままに

運命のままに

豊島 与志雄

「黒潮 第壹卷第貳号」太陽通信社、1916(大正5)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,406 字 · 57 页

青空文庫

そして、私は何時までも彼女を待っている、彼女の運命に手を差出すだけの力はないが、彼女が何時かまた私の胸に帰って来てくれることを永久に待っているであろう、というようなことで手紙を結んだ。

然し英子から何の返事も来なかった。ただ少し加減が悪いので後でゆっくり手紙を書くという簡短な葉書が一つ来たのみであった。

一週間許りして思い切って英子を訪ねると、彼女は丈夫そうにしていた。そして私の顔を見ると陰鬱なものが眉根に漂った。ああ何という冷酷な彼女の心であったろう。彼女は私との対座を避けるように母の所にすぐ私を導いていった。

私は自分の運命を肯定して何物をもじっと堪えて進んでゆこうと自分に誓っていた。然し目のあたり英子の姿を、そしてその冷たい心を見る時、私はどうしていいか分らなかった。自分を呪いたいような気になった。然し私は決して英子を呪いはしなかったことを、云って置かなければならない。

が破滅は案外早くやって来た。

それは空がどんより曇った佗びしい日であった。私が英子を訪ねると、春子さんが私を玄関に迎えてくれた。そして英子は不在だがすぐに帰るだろうからと云って、私を茶の間に導いて行った。