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みちづれ
道連
豊島 与志雄
「中央公論」1924(大正13)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,366 字 · 37 页
然し僕の感じから云えば、確かに本当のことだったのだ。
なに、全く夢のような話だって、まあ待ち給え、だんだん面白い話になるから。だがまあ一寸煙草を一服してからにしよう。
三
中学の三年級の時だった。僕は或る春の闇夜に、山裾の道を二里ほど歩いたことがある。
その頃僕等の学校では、昔の蛮風が残っていて、裏面はともかくも表面だけでは、女のことを口にするのを卑劣だとして、その結果多少男子同士の風儀が乱れていた。と云ってもそれは重に口先だけのことで、実際はさほどでもなく、実行の方面はやはり女性に向っていた。ただ女性の方は誰も皆秘密にしていて、仲間での噂話は、誰彼は誰彼に目をつけてると、そういったことが重だった。
こう云えば君は笑い出すかも知れないが、僕だって上級の或る男から目をつけられたことがある、この顔でね……。だがその頃は僕ももっと見栄えがしたものだよ。その代り僕の方でも、同級の或る男に目をつけていた………と云っちゃ語弊があるが、まあその男に好感を持ってたものだ。向うでも僕に好感を持ってることがよく分っていた。そして向うに云わせると、却って僕の方に目をつけてたと云うかも知れない。