轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

のざらし

野ざらし

豊島 与志雄

「中央公論」1923(大正12)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,100 字 · 39 页

青空文庫

その時彼は初めて、何故に此処に来たかを自ら惑った。九州へ行くか行かないかについて、心に喰い込んでる彼女に片をつける、それが彼の求めてる重な事柄だった。それには、暫く沢子から離れて自分の内心を見守るのが当然の方法なのを、却って反対に、沢子の許へ来てしまったのである。沢子の許へ来て、何の片をつけるというのか? 昌作は九州行きを考えてみた時から初めて、沢子の存在が自分にとって光であるように感じただけで、外面的に云えば、二人は屡々顔を合して親しい心持になっているという以外に、何等の交渉もない間柄だったのである。二人の心がぴたりと触れ合う話を交えたこともあるけれど、それもただ友人という位の範囲を出でなかった。

「俺は今になって、初めて恋をでもするように、女性というものを知らない初心者ででもあるように、沢子に恋をしたのであろうか?」

或はそうかも知れなかった。然し、いくら自分を卑下して考えても、単にそればかりではなかった。では一体何か?……その雲を掴むような疑問をくり返してるうちに、昌作は深い寂寥の中へ落ち込んだ。

珈琲と菓子とを持って来、次にコニャックの杯を持って来た沢子が、彼の上から囁くように云った。