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のざらし

野ざらし

豊島 与志雄

「中央公論」1923(大正12)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,100 字 · 39 页

青空文庫

それを、何とも云わないで、片山さんは今でも毎月僕に生活費の不足を出してくれてるんだ。そして僕のために非常に奔走して、僕には勿体ないほどのあの九州の口を探してくれた。いくら僕が恩知らずだって、はっきりした理由もないのに、断れるものか。」

云ってるうちに彼は捨鉢な気持になったのだった。前に話したことはあるけれど、此処に持ち出さずともいい豚の女のことまで云い出して、自ら自分を鞭打ちたかったのである。彼はなお云い続けた。

「それは片山さんだって、好意が……親のような好意があるなら、僕を九州まで追いやらずともいいさ。然し僕はもう片山さんの心をあれこれと詮議立てしたくはない。何もかも黙って受けようよ。僕のような者には、全く見ず知らずの新しい世界にでもはいらなけりゃ、生活が立て直りはしないんだからね。仕事を見付け出してやることが、僕を救う途だそうだ。そうかも知れない。仕事さえあれば、朝から晩まで馬車馬のように追い立てられさえすれば、それで僕の生活が立て直るんだろうよ。其他のものは何にも……。」

昌作は今にも自分が泣き出しそうになってるのを感じた。と一方に、自嘲の念が湧いてきた。