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きんのうお

金の魚

小川 未明

「面白倶楽部」1921(大正10)年1月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 4,768 字 · 10 页

青空文庫

ある夜、金持ちは不思議な夢を見ました。自分は、遠い南へ旅をしたのであります。それは暖かな、明るい国でありました。いろいろな町を通り、いくつかの船のたくさん泊まっている港を見て過ぎました。そして、ある日のこと、目の前に、みかんのなっている山をながめました。

旅人は、あるときは船に乗ったり、あるときは馬に乗ったり、またあるときは歩いて、ここまできたのであります。山はそんなに高くありませんでした。冬の季節でありましたけれど、林の下には、緑の草が一面にしげっていました。この国には、冬というものがなかったのです。その山を上りますと、あなたに海がありました。海の上は眠るように穏やかでありました。海のほとりに、町がありました。いろいろの建物がその頂を青い空にそびえていました。つばめがさえずりながら町の上を飛んでいました。

その町の中に、赤い旗が、長いさおの先にひらめいています。それは、万病を治す不思議な温泉のわき出るところでありました。

その温泉へいって入って、病気がみななおってしまったのです。そんな夢を金持ちは見たのでありました。

目がさめてからも、金持ちは、夢に見た景色がありありと残っていて忘れることができませんでした。