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きんどけい

金時計

泉 鏡花

「侠黒兒」少年文學、博文館、1893(明治26)年6月28日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,568 字 · 12 页

青空文庫

洋妾も傍に侍したり。渠は得々としてへいげんの英語を通弁す。

この時三郎を軽んずるごとく、

「一体貴下は何御用でお出でなすったのです。拾った物なら素直に返して、さっさとお帰りなすったら可いじゃございませんか。」

「お黙んなさい。時計と交換にお礼の百円を戴きに来ました。」

「品物を拾って、それを返すのに礼金を与れと、そちらからおっしゃる法はございますまい。」

「いえ、普通拾って徳義上御返し申すのなら、下さるたって戴きません。しかし今度のは――こう謂っちゃ陋しい様ですが――礼金が欲しさに働きましたので、表面はともかく、謂わば貴下に雇われたも同でございます。それに承れば、何か貧乏人を賑わすという様な、難有い思召から出た事だと申しますが。」

と弁舌流るるごとく、滔々として論じ来るに、へいげん等はこは案外とおもえる様にて、

「それじゃ御持参の時計を拝見いたしましょう。」

「これです。」と懐より時計を出だして指示せば、

「どれどれ。」と取らんとするをさはさせず、三郎は莞爾として、

「違えば他に遺失人を探します。貴下のなら百円下さいまし。」

彼方もさる者詭弁を構えて、

「あれとは違いますが、やっぱり私の時計で、それは先刻掏摸に盗られた品だが。