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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控 猿回し

野村 胡堂

野村胡堂『銭形平次捕物控 猿回し』。同一底本的分册已合并为一书。收入:銭形平次捕物控、銭形平次捕物控、銭形平次捕物控、銭形平次捕物控、銭形平次捕物控。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 125,671 字 · 252 页

青空文庫

【第二回】

一

あとは四十女の下女のお角。これは裏に積んであった藁に火が付いてボーッと燃え上ったのでびっくりしたというだけのこと。

下男の次六は昨夜は使いに出て、あの騒ぎの時は家に居ず、あとは臨時に雇った人達ばかりで問題の外に置かれます。

「親分、帰って来ましたよ」

八五郎は庭から声を掛けました。

「誰が帰って来たんだ」

縁側の平次はそれに応えます。

「甥の新吉ですよ。三輪の万七親分も、調べようは無かったんでしょう――それ、其処へ」

見ると薄暗くなった門の中へ、トボトボと入って来たのは、十六というにしては、これも子供子供した少年、庭の植込の陰に立って、灯の無い二階をじっと見上げて居るのです。

【第二回】

一

「お前は何を見ているんだ」

平次はそっと後ろへ回ると、新吉の肩をポンと叩きました。掌への感触は、物心つく前の女の子のような、痩せた弱々しい感じでした。

「――」

新吉は振り返って、ジッと銭形平次の顔を見詰めて居ります。眼鼻立の整った、利発らしい少年ですが、病後のせいか蒼白く痩せて、瞳の中に、不屈の負けじ魂の燃えると見たのは、今昇りかけた、十六夜の月が映ったせいだったのかもわかりません。