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かぎ

鍵

谷崎 潤一郎

「中央公論」中央公論社、1956(昭和31)年1月、5月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 102,182 字 · 200 页

青空文庫

を欲するというのは、深夜両親の寝室で時々煌々と電燈が点ったり、螢光燈ランプが輝いたりするのに辟易しているという意味であろうことは、推測するにかたくなかった。多分彼女は、螢光燈に照らされている寝室内の光景を夜な夜な隙見していたに違いないが、―――ストーブがゴウゴウと呻りを立てて燃えていたので、足音を忍ばせるには好都合であったはずだ。―――とすれば、私を裸体にしてさまざまな姿態に置きかえることに限りない愉悦を覚えていた夫の所作をも、悉く見て知っていたであろうことも想像できる。とすればまた、彼女がそのことを木村に話したであろうことも想像できる。これらの想像が当っていたことは後日に及んで明らかになったが、私は十四日の夫の日記を読んだ時に、おおよそそこまでは察していた。つまり、当時私が裸体にされて弄ばれていたことは、私自身より先に敏子が知り、木村に報告していたはずであった。

それにしても、木村は何のために「ソウイウ機械」のあることを夫に教えたり、私の裸体を撮影することを示唆したりしたのであろうか。このことについては、ついまだ木村に聞いてみるのを忘れていたが、察するところ、一つには夫にそういう智慧を授けて彼の歓心を得たかったのであろう。