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ながさきのかね
長崎の鐘
永井 隆
「長崎の鐘」日比谷出版、1949(昭和24)年1月30日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 65,109 字 · 131 页
「いや、私自身まだ十分戦う力をもっています」
「それがなおさらおかしい、というよりむしろけしからん。日本が負ける前になぜ戦力を出し尽くしてしまいませんでしたか? 国家が戦力を失ったのに個人がまだもっている。まるで家は破産して執行官が来て封印を張ったのに、三男坊が自分の貯金通帳を隠し持っているようなものだ」
「…………」
「私は戦争の間中、国家の最高命令に従い一生懸命がんばりました。私たちの大学も最後まで正々堂々がんばりました。どんな激しい空襲の中でも、赤十字精神に従って勇敢に進み出て傷者の救護をしました。原子爆弾が頭上に爆裂する瞬間まで、傷ついた哀れな人々の救護にいつどこへでも飛び出せる用意をして、しかも大学本来の任務たる医学の研究と授業に専念していたのです。爆撃により大学が潰滅した後でさえ、正々堂々最後まで大学を死守して、ついに人事を尽くし果たして後、これを離脱したのでした。私たち若い学徒が終始一貫卑怯な態度をとらず、真剣に救護に当たったということは、たとい日本が負け、日本の戦争目的の不正義が証明されても、それとは関係なしに美しいものと認めていただけると思います」