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ながさきのかね
長崎の鐘
永井 隆
「長崎の鐘」日比谷出版、1949(昭和24)年1月30日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 65,109 字 · 131 页
避難期ともいえるし雑居期ともいえる。すなわち、家がないためとりあえず飛び込んだ壕に、隣組単位で共同生活を営んだ。役所事務、配給などに好都合であった。多くの壕舎は怪我人を抱えていた。わずかに生き残った人々が奇しき因縁を互いに感じ、乏しい物を譲り合い、共に用いて暮らしていた。この不自由極まる生活の内容は美しいものであった。この時期は茫然自失期ともいえる。住民は日々の食事と、屍体の捜索とに時を費やし、回想しても今なにをしたのかわけがわからぬ時期であった。
第二月から第四月位までが仮舎期で、新生活準備期ともいえる。人はようやく生活の目標を発見し、親族同胞の安否がわかり、屍体の始末、諸届け、預金の整理もついて、再建第一歩を踏み出すのである。焼け残りの柱やトタンで二坪内外の仮舎を造り、この中に兄弟姉妹、あるいは従兄弟などという近い肉親が集まって相互扶助の生活を営んだ。このころには生存の感激がうすらぎ、他人同士の共同生活では利害関係上、感情生活の危険がすでに起こっていた。近い肉親であればそれが幾分かはやわらいだ。仮舎は辛うじて雨露を凌ぐ程度で、坪当たり数名の、すし詰めの生活だった。