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ざっきょかぞく
雑居家族
壺井 栄
「毎日新聞」1955(昭和30)年3月25日~8月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 140,106 字 · 283 页
ひきょうな人間はみんな出ていってもらいたいわ。」
すると進君は、殊勝らしくうつむいていた顔を、前髪がゆらぐほど力をこめてふり上げ、憎しみをさえこめていい放った。
「おじさんや冬太郎君もですか。」
安江はかあっと血の上るのをおさえながら、
「おじさん? うちのおじさんや冬太郎もひきょう者だというの? そんなこというあんたを、ひきょう者だというのよ。人の弱点につけこんで、なんですか、みっともない。出てってちょうだい。」
「居住権があります。」
開きなおった進君にあきれながらも、そうなると安江も皮肉になった。わざと声をおとして、
「居住権ねえ。へえ、そんな重宝なものがあるの知らなかった。やっぱり、大学はゆくものね。ああそうか、あんた法科ね。弁護士になるんでしたね。弁護士さんは、家主側からたのむことだってあるんじゃない? 家主の権利なんてのは、どうなの。まる七年間、家賃をとらなかったってことは、権利放棄になるんですか。ついでにそれも考えといてね――」
安江はそれを、わざと気軽そうにいって進君の部屋を出たのだった。ドアをしめたとたんに、さっきよりももっと重い石を、もう一つ抱かされたような気がしていた。