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あめあがる

雨あがる

山本 周五郎

「サンデー毎日涼風特別号」毎日新聞社、1951(昭和26)年7月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,794 字 · 43 页

青空文庫

摘要すると、剣術でも柔術でも、極めて無作為であって無類に強い。二十一二歳の頃にはその道の師範ですら相手にならなくなったが、格別に珍奇な手法を弄するわけではなく、ごく簡単に、まさかと思うほどあっけなく勝負がついてしまう。

――石中の火を打ち出す一点。

つまり彼がその「一点」をみいだしたとき、勝敗が定まるというのである。しかしそれがあまりにむぞうさであまりに単純明快であるため、当の相手は、ひっこみがつかなくなるし、観ている人たちはしらけた気持になるし、彼自身はてれるという結果になった。

父の兵庫助が死に、彼は二十四歳で家督相続をした。同時に同じ家中の呉松氏から嫁を迎えたが、これがおたよであるが、間もなく母親も父のあとを追って亡くなると、にわかに彼は居辛いような気持に駆られだした。……玄和老のおかげでずいぶん積極的にはなったものの、本性までは変らないとみえ、自分の腕前が強くなるのと反比例して、性質はいよいよものやさしく、謙遜柔和になっていった。

勝って驕らないのは美徳かもしれないが、伊兵衛は勝つたびにてれたり済まながったりする。本気になって済まながり、てれるので、相手はますますひっこみがつかない。