轻松读懂日语经典作品
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あめあがる
雨あがる
山本 周五郎
「サンデー毎日涼風特別号」毎日新聞社、1951(昭和26)年7月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,794 字 · 43 页
「いいえ嬉しいわ、有難う」
おたよは親しい口ぶりで礼を云い、本当に嬉しそうに、それをふところへ入れた。
宿の人たちに追分の宿はずれまで送られ、そこから右へ曲って峠へ向った。伊兵衛はなかなか落胆からぬけられないらしい、おたよはしいて慰めようとは思わなかった。
――これだけ立派な腕をもちながらその力で出世することができない、なんという妙なまわりあわせでしょう、なんというおかしな世間なのでしょう。
彼女はそう思う一方、ふと微笑をさそわれるのであった。
――でもわたくし、このままでもようございますわ、他人を押除けず他人の席を奪わず、貧しいけれど真実な方たちに混って、機会さえあればみんなに喜びや望みをお与えなさる、このままの貴方も御立派ですわ。
こう云いたい気持で、しかし口には出さず、ときどきそっと良人の顔をぬすみ見ながら、おたよは軽い足どりで歩いていった。
伊兵衛もしだいに気をとり直してゆくようだった、失望することには馴れているし、感情の向きを変えることも(習慣で)うまくなっている。ただ妻のおもわくを考えて、そう急に機嫌を直すわけにはいかない、といったふうであった。