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ゆき
雪
楠田 匡介
「探偵新聞」1948(昭和23)年5月5日号、5月15日号、5月25日号、6月5日号、6月15日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,792 字 · 50 页
解雇の事は知りません。……主人の気まぐれを、気にして喜んだり、怨んだりする事になりますと、あの夜、家にいた五人の人は勿論、恵須取の人全部が兇行の動機を持つ事になるでしょう」と望月はそれをこの様に説明した。
雪は十時頃やんで、屋敷の外の雪の中には、山村の帰って行った足跡しかついていなかった。
書庫は丸太造りの頑丈なもので、その内側から(閂)が下ろされていた。勿論、犯人の隠れる所も、ドア以外からは出られるすき一つなかった。
署長の話が終ると、警部はため息をつきながら、
「こりゃあ、大変な事件ですね。一寸手におえないのではないかな……余程上手に、緻密に細工された殺人ですね。先ず、内側からカンヌキをかけて置いたなんてのは、どんな風な戸だか知りませんが、一筋縄では行かない奴ですよ。……さあ、では、現場を見せて頂きましょうか」
二十分して、一行は早川家に着いた。
「ほう! これは……素晴しいものですね」
田名網警部は、現場であるその書庫に一歩足を入れるなり、こう感嘆の声をあげた。
旧樺太時代の丸太小屋を改造して書庫兼書斎にしたものであった。十畳位の広さで、内部には柾目の通った檜の板を張り、保温のためその間には、木屑がつめられてあった。