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ゆき

雪

楠田 匡介

「探偵新聞」1948(昭和23)年5月5日号、5月15日号、5月25日号、6月5日号、6月15日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,792 字 · 50 页

青空文庫

それはランプは、あの夜と、今でも同じ高さにあった。とすると灯は、あの高さのままで、消された事になる。だがその下には踏み台にする椅子も机もなかったではないか。では台なしであの高さの灯を消し得る者――それは五尺七八寸の丈のものでなければならない。然し容疑者の望月も伊東も五十嵐も又山村だっても五尺五寸以上ではなかった。ではどんな方法であの灯を消したろう? 何か、器物を使ったのであろうか? 犯人が消したのに違いないのだが――

警部は暗い心で一応その問題をうち切った。そしてその灯を全然無視してあの惨劇を組み立てて見た。すると一つの可能が見え出された――だが灯の消されたのは、捨て去る事の出来ない事実である。

警部は望月を出してもらって訊問したが、やはり新しい事実を聞き出す事は出来なかった。疑問を持ったオーバーや寝巻の件も、あの惨劇の午前中早川に便所の掃除を命ぜられ寒さに、石のように堅くなった糞尿を金テコでたたき割って運んだため、それが体中にとび散って、その為に洗濯に出したというのである。寝巻も長い事着放しにしていたので一緒に出したまでだ。というのであった。

早川家に聞き合せると掃除の件は日時も符合していたし、若し血液があったとしても、このような田舎では洗濯して終ったそれから血痕の有無を証明する事はとうてい出来る事で