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ゆき
雪
楠田 匡介
「探偵新聞」1948(昭和23)年5月5日号、5月15日号、5月25日号、6月5日号、6月15日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,792 字 · 50 页
「そうね……だけどまだ、火も入れてないのに。一寸見て来て下さい」
望月は出て行ったが、すぐ帰って来て、
「書庫には鍵がかかっていますが、返事がありません」
「返事がないって?」
常は腰を浮かした。火も入っていない書庫である。
常々心臓が悪るくて近年は家から一歩も出ない主人である。この寒さに麻痺でもおこしてたおれているのではなかろうか――常にはこの不安があった。
伊東、五十嵐、望月、常と四人は食事もそこそこに立って、書庫に行ったが、中からだけしか掛けられないカギがかかってあり、その厚い扉は押してもびくともしなかった。
人々は扉を壊すより仕方がなく、カジヤを持ってきて、無理矢理にこじ開けにかかったが、こんな事には金をおしまなかっただけに、なかなか開かなかった。人々が汗になってその扉を壊して入った時、人々の不安は不幸にも適中して、早川久三は自分の安楽椅子に深々と落ち込んでぐったり頭をたれて死んでいた。
「あ! あなた!」
常がかけこんで、体にさわろうとして、弾かれたようにとびすさった。人々もびっくりして近寄って行ったが、
「…………」
声もなく、立ちすくんで終った。