轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

ゆきのやどり

雪の宿り

神西 清

「文藝」河出書房、1946(昭和21)年3、4月合併号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,995 字 · 51 页

青空文庫

それでもう最後でございます。わたくしは、居残っております十人ほどの青侍や仕丁の者らと、兼ねてより打合せてありました御泉水の北ほとりに集まり、その北に離れておりますお文倉をそびらに庇うように身構えながら、程なく寝殿やお対屋の崩れ落ちる有様を、あれよあれよとただ打ち守るばかり。さあ、寝殿の焼け落ちましたのは、やがて午の一つ頃でもございましたろうか、もうその時分には火の手は一条大路を北へ越して、今出川の方もまた西の方小川のあたりも、一面の火の海になっておりました。

その中を、どこをどう廻って来られたものか、松王さまは学僧衆三四人と連れ立たれて走せつけて下さいました。わたくしは忝けなさと心づよさに、お手をじっと握りしめた儘、しばしは物も申せなかったことでございました。お文倉にも火の粉や余燼が落下いたしましたが、それは難なく消しとめ、やがて薄らぎそめた余煙の中で、松王さまもわたくしどもも御文庫の無事を喜び合ったことでございます。松王さまは小半時ほど、焼跡の検分などをお手伝い下さいましたが、もはや大事もあるまいとの事で、間もなく引揚げておいでになりました。

その未の刻もおっつけ終る頃でございましたろうか。