轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
ゆきのやどり
雪の宿り
神西 清
「文藝」河出書房、1946(昭和21)年3、4月合併号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,995 字 · 51 页
何か言伝てでもあるかな」とのお答え。「姫君へお返りごとは」と重ねて伺いますと、「いま喋ったことが返事だ。覚えているだけお伝えするがいい。」そうお言い棄てになるなり、風のように丘を下りて行かれたのでございます。
近江へ往くとは仰しゃいましたが、わたくしには実とは思われませんでした。なぜかしらそんな気が致したのでございます。ひょっとしたらあのまま東の陣にでもお入りになって、斬り死になさるお積りではあるまいかとも疑ってみました。これもそのような気がふと致しただけでございます。いずれに致せ、その日以来と申すもの、松王様の御消息は皆目わからずなってしまいました。地獄谷の庵室と仰しゃったのを心当てに尋ねてみましたが、これはどうやら例のお人の悪い御嘲弄であったらしく、真蘂西堂は前の年の九月に伊勢殿と御一緒にあさましい姿で都落ちをされたなりであったのでございます。ちょっと潜かに上洛されたような噂もありましたので、それを種に人をお担ぎになったのでございましょう。鶴姫様の御悲歎は申すまでもございません。南禅相国両大寺の炎上ののちは、数千人の五山の僧衆、長老以下東堂西堂あるいは老若の沙弥喝食の末々まで、多くは坂下、山上の有縁を辿って難を避けておられる模様でございましたので、その御在所御在所も随分と探ねてまわりました。