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せつま
雪魔
海野 十三
「東北少国民」河北新報社、1946(昭和21)年3月~9月号
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 13,355 字 · 27 页
「向こうへ逃げよう。彦くん、早く……」
五助は先に立って、反対の山の斜面へ、兎のようにかけのぼっていった。
二少年の背後に、すさまじい響が起ったが、それをふりかえる余裕もなく、二人はなおも一生けんめいに斜面をはいのぼった。息が切れる。心臓が破裂しそうだ。
響が小さくなったとき、二少年は始めて生命を拾ったことを知って安心した。二人とも雪の中にぶったおれて、しばらくは起上る元気もなかった。
やがて二人が元気をとりもどして雪の上にむっくり起上ったとき、雪はもうやんでいて、あたりは明るさを増していた。そして二人の目にうつったものは、ものすごい雪崩のあとであった。さっきまで二人が走っていたところは、もうすっかり雪の下になっていた。観測所のあった雪穴なんか、もうはるかの底になってしまった。
「ああ、こわかったねえ」
「もう死ぬかと思ったよ。兄さんはどうしたかしらん」
「さあ、困ったねえ」
とうとう一造の所在をたしかめないうちに、このとおり雪崩になってしまったのだ。一造の生死のほどが一層心配になってきた。彦太は何とかして五助を安心させたいと思ったけれど、そんな材料はなんにも見あたらなかった。