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かみなり

雷

海野 十三

「サンデー毎日 秋期特大号」毎日新聞社、1936(昭和11)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,706 字 · 40 页

青空文庫

ワンワン金が唸っている彼の懐中が覗いてみたいくらいだった。

「じゃ、やりましょう。……オイ皆、休んじゃいけないぞ。後で一杯飲ませるから、なんでも彼でも、今日中に組みあげてしまうんだ」

しかし人夫はなかなか動こうとしなかった。この土地は、甲州地方に発生した雷の通り路になっていた。折柄の雷のシーズンを迎えて、高い櫓にのぼるには、相当の覚悟が必要だった。

人夫の逡巡のうちに、いよいよ疾風がドッと吹きつけてきた。黒雲は、手の届きそうな近くに、怒濤のように渦を巻きつつ、東へ東へと走ってくる。

ピカリッ!

一閃すると見る間に、向うの野末に、太い火柱が立った。落雷だ。

「……どうです、北鳴さん。私の家はすぐそこですから、夕立の晴れるまで、ちょっとお寄りなすって雨宿りをせられてはどうです」

稲田老人は、北鳴四郎の洋服を引張らんばかりにして云った。

「ええ、ではちょっと御厄介になりますかな」

「ああ、それは有難い。……ささ、そうなされ」

北鳴は、松吉を激励して、工事場を出ようとした。そのとき外からアタフタと駈けこんで来た男があった。

「オイ松さん。松さんは居ないか」

「おお化の字。