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かみなり

雷

海野 十三

「サンデー毎日 秋期特大号」毎日新聞社、1936(昭和11)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,706 字 · 40 页

青空文庫

いずれ親譲りがある筈だった財産というのも、近頃親の年齢甲斐もない道楽で、陽向に出した氷のようにズンズン融けてゆくという話である。その当て外れした心細さに引きかえ、曾ては仲を裂きまでした北鳴が、こうして全身から後光の出るような出世をして、二千円や三千円の金は袖に入れているという風な豪華さで、さらに博士まで取ろうとしている。老人たちにとって、それは痛くもあり、且つは羨しいことであった。なんとかして機嫌をとって置いて、何とかして貰いたいものをと、彼等の慾心は勘定高いというにはあまりにも無邪気だった。

「……そこで四郎さん。あの高い櫓を拵えてどんなことにお使いなさるですか」

と、老夫人は団扇の風を送りながら訊いた。

「ホウ、それそれ。わしもそれを伺おうと思っていたところだ。……」

と稲田老人も膝をすすめる。

「……あの櫓のことですか」と、二人の顔を見て北鳴はニヤリと笑った。二階の欄干をとおして、雨中に櫓を組む人夫の姿が、彼の眼底に灼きつくように映った。

「はッはッはッ。あれを見て、貴方がたはどんな風にお考えですか。いやさ、どんな感じがしますかネ」

「どんな感じといって、……別に……」