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しんさいにっし
震災日誌
喜田 貞吉
「社会史研究 第一〇巻第三号」1923(大正12)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,617 字 · 40 页
それと見た群集はすぐにそれを放火の犯人にきめてしまって、棍棒を振うて途中で要撃しようとする。同じ通りを検束されて行く人が相踵ぐ。護国寺境内の杉林の中に、七、八人の一団を巡査が幾人かで保護している。どこからか玄米の握飯を持って来て、手づかみでそれを分配して、「僕らもそれを喰べているのだから君らもそれで辛抱し給え」となかなか親切だ。彼らもそれを感謝して、バラバラする奴を手づかみで頬ばっている。やがて警察へ連れて行かれる。気の早い連中はそれらをも直ちに不逞の徒としてしまって、用捨なく棍棒を振りまわそうとする。警察の門前はそれらの連中で包囲されている。それを保護して無事を得せしめる警官もなかなか骨の折れることだと思った。
用心が悪いとあって自宅の裏門は昼の間から締切っておいた。それを夕方に烈しく叩くものがある。「喜田さんの宅へ○○が放火した」と大声に呼ぶものがある。おりから麦湯を沸かしていた妻が戸を開けに行こうとするうちに、早くも二、三十人の町内の衆が、それをも待たずに叩き破って闖入した。「ソレ火を持って屋根へ上った」「ソチラへ逃げた」「コチラへ逃げた」