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しんさいにっし

震災日誌

喜田 貞吉

「社会史研究 第一〇巻第三号」1923(大正12)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,617 字 · 40 页

青空文庫

と。それに対して天龍堂は、この人は自分の友人で、性質善良何らの懸念を要せぬとの証明書を与えた。その証明書に果してどれだけの効能があったか知らぬ。

群馬県生れとかの学生で、誰何のさいに言語が明晰でないという理由で抑留されたものがある。本人自身も閉口してしまい、この先々とても無事に通行出来そうもないと覚悟して、右隣の○君の露宿に雑魚寝さして貰って、一夜を明かしたのもあった。

通行人の中にも案外強いものがある。なにぶん相手が大勢で、しかも気が立っているという物騒千万なものなので、気の利いたものはきわめて柔順にその誰何に応じて、無事に通過することを念とするが、時には何を小癪なという態度を示して、ゆくりなくも悶着を起す場合も少くなかった。だいたい自分の参加している自警団は、他に比してすこぶる温和な方で、言葉使いも丁寧である。しかし前々すでに他の警固所で十分荒されて、興奮しきって来ているものにはそれが通じない。

「お身分は」

「在郷軍人だ。これを見て呉れ」

と勲章を指し示す。この態度が若い団員の血を沸かさせた。

「それが何だ」

「勲章だ」

「勲章が何だ」

「戦功によって天皇陛下から賜わったものだ」