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しんさいにっし

震災日誌

喜田 貞吉

「社会史研究 第一〇巻第三号」1923(大正12)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,617 字 · 40 页

青空文庫

横浜にも、鎌倉にも、その他にも懇意な人が少くない。箱根へは頼みつけのN医学士が三十一日に行かれたはずだ。それらの消息いかんと気が気でないが真相が明かでない。西川龍治君は昨日鎌倉へ行かれたが、むろん汽車はなく、自動車も利かぬという。留守宅を訪うてみても無事に着かれたかどうかすらわからない。しきりに気をもんでいると、ヒョッコリ小杉美二郎君が見えた。横浜のある会社に勤めておられたのが、万死に一生を得て夜通し徒歩して帰京されたのだったという。その談によると、横浜の家屋はたいてい倒壊して、同君の勤めていた会社もその数に漏れなかったが、同君は素早くテーブルの下に這い込んで微傷だも受けず、やっとのことで這い出した跡へさっそく火がまわって来たとのことであった。何という幸運なことであろう。それにしても同じ市役所に市史編纂に従事しておられる堀田〔(璋左右)〕文学士(日本歴史地理学会委員)や大野秀文君(鎌倉覚園寺住職)は無事であったか、同地に昨年堂々たる邸宅を構えられた深沢〔(※吉)〕文学士(日本歴史地理学会前幹事)はどうであったろう。鎌倉は、小田原は、箱根はと、次から次へと人の上が案ぜられるが、通信は杜絶しているし、尋ねて行く訳にもならず、小杉君の実話にいっそう不安の念が増すばかりだが、さて何とも致し方がない。