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きりのばんしゃ
霧の蕃社
中村 地平
「文学界」1939(昭和14)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,389 字 · 57 页
戦況を有利に展開する希望は全くなくなってしまった。山地の季節ではもう冬に入っている十一月の十六日、首領のモーナルーダオは自分の膝近くに壮丁たちを集めた。頭領として一方の指揮を任じてきたタダオノウカンを始め、ヒポサツポ、ヒポアリス、タイモポホツク等はすべて既に或いは弾丸に倒れ、或いは逮捕されてしまっており、一座に残っているのはそれと数へ得る人数の若ものたちばかりである。モーナルーダオは沈痛な語調で言った。
「みんなが知っているように、弾丸も食料ももう明日を支える分も残っていない。覚悟はついていると思うが、いよいよ最後の決心をしてもらう時がきた」
一座には誰も答えるものもなかった。しかし、間もなく彼らは期せずしてうち揃い、すぐ傍らの山林のなかに入って行った。言いあわしたように縊死を遂げたのである。
輩下の若者たちが自尽したのを見とどけると、モーナルーダオは一族十六名を引きつれて自分の耕作小舎へ帰って行った。家族のなかで姿を見せないのは、次男のタダオモウナオと、娘のホンモウナオとの二人だけである。
「タダオは元気のいい奴だから放っておいても大丈夫にちがいないが、ホンは女だから……」