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きりのばんしゃ
霧の蕃社
中村 地平
「文学界」1939(昭和14)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,389 字 · 57 页
四
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モーナルーダオがうちあけた恐るべき計画に賛成し、兇行の中心ともなったこれらの人間たちを、ここに簡単に紹介しなければならない。
同じ霧社のマヘボ社に近く、ホウゴウ社という蕃社がある。ヒポサツポはそこに住む若者である。大正十四年、彼は近くに在る万大社のルビナオイという娘のところへ養子に行った。
霧社も当然含まれるが、いったいこの辺り一帯に分布しているタイヤル族という蕃人は、昔から武勇にすぐれていることと、風紀がきびしいのとで知られている。しかし、たまに例外があるのは断わるまでもないところで、このルビナオイは生来多情な女であった。娘の頃からとかくの噂は絶えなかったが、素行がおさまらないのは結婚したのちも同じことであった。怪しい男が家のぐるりで口琴を吹いて彼女を呼んでいるのや、彼女が男といっしょに粟畑のなかへ消えてゆくのやを見かけた者も少くないのである。養子に貰ったヒポサツポにもルビナオイは間もなく倦きがきた。そして、遂いには離縁してしまった。
嫌われて婚家を追いだされはしたが、ヒポサツポの方では彼女のことが思いきれなかった。ホウゴウ社の自宅に帰ってからは、鬱々として仕事も手につかないのである。