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きりをけすはなし
霧を消す話
中谷 宇吉郎
「思想」1945(昭和20)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,903 字 · 16 页
米英軍が大陸にまだ充分な飛行機の根拠地を得ていなかったので、主な航空作戦は英本土の飛行場に基地を求めるより仕方がない状態であった。ところが倫敦霧で有名なように、英本土南方地域は、冬期間濃霧に蔽われることが非常に多い。濃霧中の盲目離着陸も現代の発達した航空術では不可能ではないが、速成大量教育の航空兵を沢山使って、大規模な航空作戦を濃霧中で行うことは出来ない。「英国の攻勢が進展するにつれ、濃霧の事故から生ずるわが爆撃機の犠牲がいよいよ増大した。英国の飛行場上空の霧はドイツ領上空の高射砲よりも恐るべき脅威となった」
その時機をつかんで、ルントシュテット攻勢が電撃的に開始された。ドイツ側の報道によると、米英軍は木の葉の如く追われ、数個師団が殲滅された。第二戦線の完全成功を誇っていた米英軍は、再び欧州大陸から追い落されるかもしれない危機に立った。
ところがこのルントシュテット攻勢は花火の如くにして終ってしまった。旬日にして米英軍は再び立ち直って、ドイツ国境に矛を向けて迫った。北海の濃霧の底に沈んでいたはずの英国の飛行場から、爆撃機の大軍が次ぎから次ぎと飛び出して来て、ドイツ攻撃軍の補給線を断ち切ったからである。