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きりをけすはなし
霧を消す話
中谷 宇吉郎
「思想」1945(昭和20)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,903 字 · 16 页
それにスパークか何かで一せいに点火する。そうすると石油が蒸気化して完全燃焼をする。その熱気が空気と混じて鉄の樋から大気中に立ち昇る。樋の上蓋は多分丈夫な鉄格子にでもなっているのであろう。この熱気が外の冷たい霧のある大気と混じて、気温が或る程度まで上昇すると霧は消えるはずである。暖められた空気は対流で上昇するので、しばらく続けていると漸次上空の霧まで霽れるわけである。
この方法ならば、輻射霧でも移流霧でも皆消えるはずである。輻射霧、即ち地表面が輻射で冷えたために出来た霧ならば、これは殆んど無風の時に生ずるので、しばらく石油を燃焼して一度霧を消してしまえば、後は相当の時間ずっと霽れてしまう。移流霧だと、付近の冷たい海上などで出来た霧が流れて来るので、大抵三メートルや四メートルの風が吹いている。この方は一度消しても後から後からと霧が流れて来るので、使用時間中ずっと石油を燃し続ける必要がある。滑走路は大抵はその土地の主風の方向に設置されているので、風上の方で必要量の熱気を放出し続けていれば良いわけである。
ところで石油の使用量が問題である。英国でこのFIDOを設置した普通の飛行場では、一時間に七千ガロンの石油を燃したそうである。