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きりをけすはなし

霧を消す話

中谷 宇吉郎

「思想」1945(昭和20)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,903 字 · 16 页

青空文庫

一時間七千ガロンというのは、少し量が多すぎるようである。もう少し巧くやればそれよりもずっと少なくて済むようにも思われるが、英国の石油の消費を心配する必要は無い。実験と実地使用との二年半の間に、三千万ガロンの石油を消費したというから、随分思い切って使ったものである。もっともこれで一カ月でも戦争が早くすめば安いもので、B29一千機でサイパンから東京へ数回往復すれば、すぐに三千万ガロンくらいの燃料は使ってしまうという話である。

一九四二年の十一月四日に、天然霧についての中規模試験が成功すると直ちに、実戦用飛行場に本施設を作り始めた。そしてその翌年の六月十七日にはもう空軍中将のベネットが、視界百ないし二百ヤードの濃霧中を、FIDOによって霧の全く消散した滑走路上に四回着陸してその実用化の成功を報じている。

FIDOはその後も改良されて、その年の秋の濃霧季節までに施設が完成した。燃料相のロイドはチャーチル宛に次のような報告を送った。

「一九四三年十一月十九日ハリファックス四機がルールに作戦後首尾よく着陸し、はじめてFIDOが実戦に使用された記録が樹立した」

チャーチルはこの報告をテヘランで受取ったのである。