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あおくさ
青草
十一谷 義三郎
「文芸時代」1924(大正13)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,645 字 · 14 页
三
下から仰ぎ見ている教師も生徒も愕然として顔色を変えた。「下りろ、下りろ。」と教師が甲高に言った。兄はそれにはかまわずにも一度梁木の上に立ち上った。そして今度は五寸ぐらいずつ小刻みに丹念に歩いていった。下の人たちは笑いながら蒼くなってそれを看守った。
兄が渡りきって下りてくると、教師が「ばか」と言った。そして兄は残りの時間じゅう、梁木の下に立たされたのだという。
兄は一言もそれを家の者に話さなかった。弟は兄にある懼れをさえ抱き初めた。
弟は歌津子といっしょに小学校に通っていた。雨の日は同じ傘で帰ったり、お天気には月見草や手鎖りや草笛に誘われていっしょに道草を食ったり、それからもちろん意地の悪い友だちの冷評と楽書きの的となったりしつつ彼らは毎日愉快であった。
彼女も兄に対してはもうある距離を感じていた。そうして学校から帰ってきて、復習をしてもらうために、弟とともに兄の机の前に坐る時にも、ともすると救いを求めるように弟の方へ微笑みかけて、兄に向っては、以前ほどはっきりと口を利かなくなってしまった。
三
杉家は酒の醸造を業としていた。住居から五町ほどいった浜辺に酒倉がある。