轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
あごじゅうろうとりものちょう
顎十郎捕物帳
久生 十蘭
08 氷献上
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,674 字 · 36 页
車寄についたお雪の桐箱は、御側用人、お坊主附添いでまず老中の用部屋まで運び入れ、用部屋から時計の間坊主、側用取次と順々に送られ、お待ちかねの将軍が、これを器に盛って、今年の雪は、ことのほか冷たいの、などと御賞美なさる。
さて、加賀さまのお氷が西の丸へあがったと聞くと、本郷、下谷一帯の町家のものはもちろん、はるばる下町からも、遠近貴賤の別なく容器を持っておあまりの氷をもらいに集ってくる。
暑いさなか、ようやくお氷は頂戴したが、日本橋まで駕籠を飛ばすうちに丼の雪が溶けて水になる。ずいぶん高価い水だが、生温になった水でも、お氷が溶けた水だといえば、ありがたい気がする。
江戸は、ことに水の悪いところで、町人は夏のあいだに雪や氷を口にするなどということは思いもおよばなかったので、加賀さまのお雪はたいへんに珍重された。
……そういうぐあいに、丼や蓋物を持った面々が四列つなぎになって並んでいるのを、かきわけるようにして前へ泳ぎだし、番衆に押しもどされてすごすご後列へもどって行くが、すぐまた出てきて逆上したように、お氷を、お氷をとあえぐ、四十二三の浪人ていの男。