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いずこへ
風と光と二十の私と・いずこへ 他十六篇
坂口安吾『風と光と二十の私と・いずこへ 他十六篇』。同一底本的分册已合并为一书。收入:いずこへ、青い絨毯、石の思い、オモチャ箱、篠笹の陰の顔、天才になりそこなった男の話、二十七歳、母、魔の退屈、私は海をだきしめていたい、流浪の追憶。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,879 字 · 242 页
按吉に慰められているうちは庄吉も力強いような気持で、すっかり相手にまかせきり安心しきってウンウンきいていたが、按吉がさっさと帰ってしまう、待ちかねたものを待つうちはまだよかったが、すでに来り、すでに去った、按吉の居るうちこそはそこに何がしの説得力もあったにしても、按吉去る、その残された慰めの言葉は何物ぞ、ただ空虚なる冗言のみ、女房はおらぬ、男と共に失踪している、この事実を如何にすべき。
庄吉の消耗衰弱は更に又、急速度に悪化した。
庄吉の小学校時代からの後輩で文学青年の戸波五郎が、ちょうど彼の家と露路をへだてて真向いに住み、縁先からオーイとよぶと向うの家から彼の返事をきくことができる。戸波は庄吉の東京にいる頃、東京にすみ、本屋の番頭で、殆ど三日にあげず遊びにきていた仲よしで、一緒に方々借金をつくって飲み歩いた仲間であるが、この一年来小田原へ戻って駅前に雑文堂という書物の売店をひらき、毎日出かけて行く。尤も、小僧に店をまかせて、時にはオトクイ廻りもやるが、自分は昼から酒をのんでいるようなことも少くはなく、売上げをその一夜に飲みあげて足をだして、もう夜逃げも間近かなところに迫ってもいた。